基礎教養

皮膚常在菌が体臭をつくる。汗と皮脂を“ニオイ”に変える微生物の科学

皮膚常在菌
皮膚常在菌が体臭をつくる。汗と皮脂を”ニオイ”に変える微生物の科学 | においの教科書
スメル君
🍃 スメル君
博士……汗は無臭なんですよね?でもニオイが出るのは”常在菌”のせいなんですか?
匂崎博士
👨‍🔬 匂崎博士
そう。体臭の正体は”汗”じゃない。汗と皮脂を”変化させる存在”──それが皮膚常在菌だ。

体臭=不潔というイメージがよくありますが、実はまったく逆。

体臭は身体の仕組みが正常に働いている証拠。常在菌は”敵”ではなく、私たちを守るパートナーなのです。

今回は「皮膚常在菌 × 汗 × 皮脂」がどのように体臭を生み出すのか、科学的に深く解説します。

皮膚常在菌とは何か?──人間と共生する”肌の住民たち”

皮膚常在菌 = 肌に住む微生物コミュニティ
(マイクロバイオーム)
匂崎博士
👨‍🔬 匂崎博士
人間の皮膚には、1兆個以上の菌が住んでいると言われています。種類も多様です。

主な皮膚常在菌

  • 表皮ブドウ球菌(Staphylococcus epidermidis)
  • アクネ菌(Cutibacterium acnes)
  • コリネバクテリウム属(Corynebacterium)
  • マラセチア(Malassezia)
匂崎博士
👨‍🔬 匂崎博士
常在菌は、皮膚を守る”自然のバリア”なんだよ。

常在菌の重要な働き

  • 外部の雑菌の侵入を防ぐ
  • 皮脂を分解し、皮膚のpHを整える
  • 乾燥から守る
  • バリア機能の維持を助ける

常在菌は「皮膚の治安維持部隊」
存在そのものが健康に必要不可欠

スメル君
🍃 スメル君
菌って悪者だと思ってたけど…ぼくたちを守ってくれてるんですね!

では、なぜ常在菌が体臭をつくるのか?

匂崎博士
👨‍🔬 匂崎博士
汗は無臭。でも、菌が分解した瞬間に”ニオイ物質”が生まれる。

常在菌が生み出すニオイ物質

常在菌は、汗や皮脂を分解するときに、以下を発生させます:

  • 脂肪酸(酸っぱいニオイ)
  • アンモニア(ツンとするニオイ)
  • 有機酸(蒸れたようなニオイ)

これが体臭の中心です。

スメル君
🍃 スメル君
じゃあ、菌の種類によってニオイも違うんですか?
匂崎博士
👨‍🔬 匂崎博士
その通り!それぞれの菌について詳しく見ていきましょう。

表皮ブドウ球菌:肌を守る「良い菌」、でも体臭の一部も担当

表皮ブドウ球菌の特徴

表皮ブドウ球菌は”善玉菌”として有名。

  • 肌の水分を保つ
  • 外敵菌から守る
  • 弱酸性を維持する

しかし、皮脂を分解する過程で脂肪酸(酸っぱいニオイ)を作ります。

匂崎博士
👨‍🔬 匂崎博士
つまり、「良い菌だけど体臭には関与する」という複雑な存在。いいやつだけど……ちょっとやんちゃ。それが彼らだね。

アクネ菌:毛穴で働く”皮脂好き”の住民

アクネ菌の特徴

アクネ菌は、毛穴の奥に多く存在する菌。

  • 皮脂を好み
  • 無酸素状態に強く
  • 脂質を分解してニオイの元をつくる

特に顔や頭皮の”皮脂臭”に関わります。

コリネバクテリウム:汗臭の主犯格

コリネバクテリウムの特徴

脇のニオイ(ワキガ)にも深く関わる菌。

  • アポクリン腺の汗に含まれる蛋白質・脂質・糖を分解
  • 特有の強いニオイ物質(短鎖脂肪酸など)を生成
匂崎博士
👨‍🔬 匂崎博士
汗臭の”深み”を生み出すのは、彼らの仕事だ。
スメル君
🍃 スメル君
菌にもいろんな役割があるんですね…!

生活習慣が常在菌の働きを変える(=ニオイが変わる)

スメル君
🍃 スメル君
博士、毎日ニオイが違うのは菌のせいなんですか?
匂崎博士
👨‍🔬 匂崎博士
そう。“菌 × 生活習慣”がニオイを日々変えているんだよ。

① 皮脂量の変動(食事・ホルモン)

皮脂量に影響する要因

皮脂=菌のエサなので、皮脂量が変わると菌の活動が変動します。

  • 脂っこい食事
  • 睡眠不足
  • ストレス
  • ホルモンバランス

これらで皮脂量は簡単に変化します。

② 湿度・温度(菌の繁殖パワーが急上昇)

菌が好む環境

菌は湿り気を好みます。

  • 梅雨〜夏
  • 蒸れた服
  • 通気性の悪いインナー

これらは菌が「大好き」な環境。結果、ニオイも上昇。

③ 洗いすぎ(意外にも体臭悪化要因)

洗いすぎの悪影響

殺菌石鹸で”良い菌”まで減ると:

  • 肌のpHが不安定
  • バリア機能が低下
  • 悪い菌が増えやすくなる

つまり洗いすぎるほど体臭が悪化しやすい。

匂崎博士
👨‍🔬 匂崎博士
肌は”無菌状態”がベストじゃない。バランスがベストなんだ!

体臭を”コントロール”するカギは「菌バランス」

匂崎博士
👨‍🔬 匂崎博士
体臭ケアの本質は「菌バランスを整えること」。今日からできる基本を3つにまとめました。

① 洗いすぎない(弱酸性×やさしい洗浄)

正しい洗浄方法

  • 強い殺菌剤は避ける
  • ゴシゴシ洗いをしない
  • ぬるま湯で優しく洗う

② 湿度対策(蒸れの時間を短くする)

蒸れ対策

  • インナーをこまめに着替える
  • 速乾性の高い素材を着る
  • 濡れタオルで拭く

③ 菌が”好きすぎる”環境を作らない

菌バランスを整える生活習慣

  • 皮脂ゾーンは重点ケア
  • ぴったりしすぎる服を避ける
  • 乾燥と蒸れの両極端を避ける
匂崎博士
👨‍🔬 匂崎博士
常在菌は敵じゃない。あなたの体を守ってきたパートナーだ。理解すれば必ず味方にできる。
スメル君
🍃 スメル君
常在菌と仲良くやっていきます!博士、ありがとうございました!

次に読むと理解が深まる記事

匂崎博士
👨‍🔬 匂崎博士
次回は「嗅覚の順応」について詳しく解説します。お楽しみに!

📚 参考文献・引用データ

この記事の執筆にあたり、以下の科学的知見を参照しております。

🦠 皮膚マイクロバイオームと体臭

Byrd, A. L., Belkaid, Y., & Segre, J. A. (2018). “The human skin microbiome”. Nature Reviews Microbiology, 16(3), 143-155.

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/29332945/

🧬 皮膚常在菌の機能

Sfriso, R., et al. (2020). “Revealing the secret life of skin – with the microbiome you never walk alone”. International Journal of Cosmetic Science, 42(2), 116-126.

https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC7998121/

💧 汗と皮膚の基礎知識

花王株式会社「スキンケアナビ」

https://www.kao.com/jp/skincare/care/

👃 嗅覚のメカニズム

公益社団法人 日本アロマ環境協会(AEAJ)「嗅覚の仕組み」

https://www.aromakankyo.or.jp/basics/introduction/mechanism/