ワキガの仕組み──アポクリン腺・菌・遺伝の関係を医学的に解説 | においの教科書

ワキガ(腋臭症)は、「汗が臭う」「不潔だから起こる」と誤解されやすい症状です。

しかし医学的には、ワキガは特定の汗腺・皮膚常在菌・遺伝的体質が組み合わさって生じる生理現象であり、清潔・不潔の問題ではありません。

本記事では、ワキガがなぜ起こるのかを「アポクリン腺」「菌」「遺伝」という3つの軸から、匂崎博士とスメル君が医学的根拠に基づいて解説します。

スメル君
🍃 スメル君
博士!ワキガって、汗が臭いってことですよね?
匂崎博士
👨‍🔬 匂崎博士
実はそうじゃないんだ。汗そのものは最初から臭いわけではない。ワキガは「特定の汗腺」「皮膚の菌」「遺伝」の3つが組み合わさって起こる現象なんだよ。

そもそも「ワキガ」とは何か?

医学的定義

ワキガは医学的には腋臭症(えきしゅうしょう)と呼ばれます。

主な特徴:

  • 主に腋窩(わき)
  • ときに耳後部・外陰部など
  • 特有の刺激臭を伴う

重要な事実

汗そのものが最初から臭いわけではない

これがワキガを理解する上で最も重要なポイントです。

カギ① アポクリン腺とは何か?

匂崎博士
👨‍🔬 匂崎博士
まず、人の汗腺には2種類あることを知っておこう。

汗腺は2種類ある

種類 主な役割 分泌物
エクリン腺 体温調節 水・電解質
アポクリン腺 性的・個体識別に関与 脂質・タンパク質

ワキガに関与するのは「アポクリン腺」

ワキガの主役はアポクリン腺です。

アポクリン腺の特徴:
  • 思春期以降に発達
  • わき・乳輪・外陰部など限られた部位に存在
  • 分泌物は無臭だが栄養価が高い

👉 この”栄養価の高さ”が、次の要因につながります

スメル君
🍃 スメル君
アポクリン腺の汗は無臭なのに栄養価が高い…?それが何か関係あるの?

カギ② ニオイを作るのは「菌」

匂崎博士
👨‍🔬 匂崎博士
いい質問だ!実は、臭いを作っているのは皮膚常在菌なんだ。

汗は無臭、臭いを作るのは皮膚常在菌

ワキガ発生のメカニズム

アポクリン腺の分泌物は、分泌された直後はほぼ無臭です。

しかし皮膚表面には常在菌が存在します。

特に関与が強いとされる菌:
  • Corynebacterium 属(コリネバクテリウム)
  • Staphylococcus 属(スタフィロコッカス)

これらの菌が、脂質・タンパク質を分解することで:

  • 揮発性脂肪酸
  • 硫黄化合物
  • ステロイド由来臭気物質

などが生成され、ワキガ特有の臭いが生じます。

🧪 科学的根拠

Troccaz M, et al. “The influence of axillary microbiota on human body odour” FEMS Microbiology Ecology, 2015.

Leyden JJ, et al. “The microbiology of the human axilla and its relationship to axillary odor” Journal of Investigative Dermatology, 1981.

スメル君
🍃 スメル君
なるほど!汗が臭いんじゃなくて、菌が汗を分解して臭いを作ってるんだ!

カギ③ 遺伝が関与する理由

スメル君
🍃 スメル君
じゃあ、ワキガって遺伝するんですか?
匂崎博士
👨‍🔬 匂崎博士
結論から言うと、ワキガ体質は遺伝的要素が強いと考えられているよ。

ABCC11遺伝子との関連

遺伝子レベルの研究

近年の研究で、ABCC11遺伝子とその多型(変異)が、以下と強く関連することが分かっています:

  • アポクリン腺分泌量
  • 耳垢の性状(湿性・乾性)
有名な関連性:
  • 湿った耳垢 → ワキガ体質の可能性が高い
  • 乾いた耳垢 → ワキガ体質の可能性が低い

これは複数の遺伝学研究で示されています。

🧪 科学的根拠

Hasegawa Y, et al. “The ABCC11 gene and axillary osmidrosis” Journal of Investigative Dermatology, 2009.

Nakano M, et al. “A strong association of axillary osmidrosis with the wet earwax type determined by ABCC11 genotype” Journal of Human Genetics, 2009.

なぜ「わき」だけが臭いやすいのか?

4つの理由が重なっている

  • 1. アポクリン腺が密集している
  • 2. 皮膚がこすれやすく蒸れやすい
  • 3. 菌が繁殖しやすい環境
  • 4. 衣類で覆われている

👉 「汗が多いから」ではなく
“構造的に臭いが生じやすい場所”という理解が重要です

ワキガ=不潔ではない理由

匂崎博士
👨‍🔬 匂崎博士
ここは強調しておく必要があるね。

医学的事実

ワキガ体質の人が特別に汗をかいているわけではありません

洗っても再発しやすいのは
腺と菌の条件が変わらないから

清潔にしても起こる人は起こる
これが医学的事実です

スメル君
🍃 スメル君
体質の問題だから、清潔にしてても起こることがあるんだね…

医学的に見たワキガ対策の基本原則

匂崎博士
👨‍🔬 匂崎博士
ここでは「治療」ではなく、仕組みから導かれる原則だけ整理しよう。

3つの基本原則

原則① 分泌物を減らす
  • アポクリン腺由来分泌の抑制
原則② 菌の増殖を抑える
  • 常在菌の”ゼロ化”ではなくバランス
原則③ 環境を作らない
  • 蒸れ・摩擦・密閉を避ける

👉 「とにかく消臭」より
原因のどこに作用しているかを見る視点が重要です

まとめ:ワキガは「汗の臭い」ではない

医学的に整理すると

  • ワキガはアポクリン腺 × 菌 × 遺伝
  • 汗そのものは臭くない
  • 不潔の問題ではない
  • 個人差が非常に大きい体質現象

においの教科書からのメッセージ

ワキガを正しく知ることは、
不必要な不安や自己否定を減らす第一歩でもあります

匂崎博士
👨‍🔬 匂崎博士
ワキガは、アポクリン腺・菌・遺伝という3つの要素が組み合わさった体質現象。正しく理解することが、適切な対処への第一歩なんだ。
スメル君
🍃 スメル君
ワキガの仕組み、よく分かった!単純に「汗が臭い」じゃないんだね。科学的に理解すると、誤解がなくなるね!

次に読むと理解が深まる記事

匂崎博士
👨‍🔬 匂崎博士
ワキガの仕組み、理解が深まりましたか?科学的に理解することで、正しい対処法も見えてきます。

📚 参考文献・引用データ

この記事の執筆にあたり、以下の医学・科学文献を参照しております。

🧬 遺伝とワキガ

Hasegawa Y, et al. “The ABCC11 gene and axillary osmidrosis” Journal of Investigative Dermatology, 2009.

Nakano M, et al. “A strong association of axillary osmidrosis with the wet earwax type determined by ABCC11 genotype” Journal of Human Genetics, 2009.

🦠 微生物と体臭

Troccaz M, et al. “The influence of axillary microbiota on human body odour” FEMS Microbiology Ecology, 2015.

Leyden JJ, et al. “The microbiology of the human axilla and its relationship to axillary odor” Journal of Investigative Dermatology, 1981.

📖 診療ガイドライン

日本皮膚科学会「腋臭症(ワキガ)診療ガイドライン」