基礎教養

ストレス臭・疲労臭は本当に存在するのか?

ストレス臭
ストレス臭・疲労臭は本当に存在するのか?──皮膚ガス(skin gas)が示す最新科学 | においの教科書
スメル君
🍃 スメル君
博士、SNSで”ストレス臭”って話題になってました!僕も緊張すると変なニオイがする気が……あれって本当にあるんですか?
匂崎博士
👨‍🔬 匂崎博士
スメル君、あるよ。ただし”誤解だらけ”の状態で広まっているけどね。

ストレス、緊張、疲労…これらが「ニオイの成分」を変えることは、すでに科学的に確認されている現象です。

近年注目されているのが「皮膚ガス」。皮膚からは汗だけでなく、分子レベルの揮発性成分(VOCs)が常に放出されているという研究が進んでいます。

この記事では、ストレス臭・疲労臭・皮膚ガス・VOCs(揮発性有機化合物)の関係を、最新研究に基づいて深掘りします。

そもそも「ストレス臭」「疲労臭」とは何か?

匂崎博士
👨‍🔬 匂崎博士
まず定義から整理しましょう。
■ ストレス臭

精神的な緊張・不安・怒りなどによって汗の成分が変化し、皮膚常在菌が作るニオイが変わる現象。

緊張した場面で”ツンとしたニオイ””酸っぱいニオイ”を感じやすいのはこれ。

■ 疲労臭

身体的な疲労・睡眠不足・慢性ストレスによって皮脂の酸化・アンモニア系のニオイが増える現象。

「疲れている日の独特のニオイ」として経験する人が多い。

■ 皮膚ガス(skin gas)

汗ではなく皮膚そのものから放出される揮発性成分(VOCs)の総称。

体内代謝の変化 → 皮膚から分子が揮発 → ニオイとして検出される。医学界でも注目の研究領域。

匂崎博士
👨‍🔬 匂崎博士
においは『心理 × 生理 × 皮膚 × 代謝』の総合結果。ストレス臭や疲労臭は”気のせい”ではなく、科学的現象なんだ。
スメル君
🍃 スメル君
やっぱり本当にあったんですね…!

ストレスで汗の成分が変わる──ニオイの”始まり”はここから

匂崎博士
👨‍🔬 匂崎博士
ストレスがかかると、自律神経が暴走しアポクリン腺・エクリン腺の汗の成分比率が変化します。

通常の汗 vs ストレス汗

普通の汗(エクリン腺)は:

  • ほぼ水
  • 少量のミネラル

ストレス汗に含まれる成分

  • タンパク質
  • 脂質
  • 乳酸
  • 糖類
  • アンモニウム

これらが多く含まれ、常在菌が分解したとき強いニオイ物質を作りやすいのです。

スメル君
🍃 スメル君
じゃあ、ストレスが”汗の質”を変えてるってことですか?
匂崎博士
👨‍🔬 匂崎博士
その通り。ストレス汗は菌が喜ぶ”ご馳走”になってしまうんだ。

最新研究:皮膚ガス(Skin gas)から分かってきたこと

匂崎博士
👨‍🔬 匂崎博士
近年、皮膚ガス(skin gas)の分析が進み、これはただの汗臭とは全く違う”体内代謝の匂い”であることが明らかになっています。

発見されている主な皮膚ガス成分

  • ジメチルスルフィド(硫黄系臭)
  • アセトン(甘い・酸っぱい)
  • イソプレノイド(植物のような匂い)
  • アンモニア(疲労臭代表)
  • 短鎖脂肪酸(すっぱい系)

これらは汗とは無関係に「皮膚そのもの」から放出されるのが特徴です。

匂崎博士
👨‍🔬 匂崎博士
皮膚は”呼吸”している。体内の代謝状態を、微量ガスとして外に出しているんだ。
スメル君
🍃 スメル君
皮膚が呼吸…!すごい発見ですね!

ストレス臭の核心:ジメチルスルフィド(DMS)仮説

ジメチルスルフィド(DMS)の特徴

ストレス臭で最も注目されているのがジメチルスルフィド(DMS)

特徴:

• 極めて微量でも臭う
• ニオイの種類は”硫黄系・玉ねぎ系”
• ストレスで上昇することが複数の研究で示唆されている

顔・首・背中など、皮脂量の多い場所で増えやすい。

「緊張したときの独特の”ツン”とした匂い」という読者の体験は、
DMSの特徴と合致します

疲労臭の正体:アンモニア × 酸化皮脂の複合作用

匂崎博士
👨‍🔬 匂崎博士
疲労臭はアンモニア系のニオイが中心です。

疲労時の体内変化

身体が疲労すると:

  • 筋肉の分解
  • アミノ酸の代謝
  • 肝機能の低下

などが進み、アンモニアを分解しきれず皮膚から揮発します。

疲労臭の構成要素

さらに疲労時は皮脂の酸化が進むため:

  • アンモニア臭
  • 皮脂酸化臭

の混ざった“複合臭”になるのが特徴。

匂崎博士
👨‍🔬 匂崎博士
疲れた日のニオイは、”皮膚ガス × 皮脂 × 常在菌”の三重奏なんだよ。

ストレス臭・疲労臭は”誰にでも起こる”正常な反応

スメル君
🍃 スメル君
博士、やっぱりぼく……臭いんですか?
匂崎博士
👨‍🔬 匂崎博士
ストレス臭も疲労臭も、身体が一生懸命バランスを取ろうとしている”正常な反応”なんだよ。

体臭は身体からのメッセージ

体臭は「不潔」ではなく、
身体と脳の働きの現れにすぎません。

安心してください。

自分でできるストレス臭・疲労臭対策(科学ベース)

匂崎博士
👨‍🔬 匂崎博士
3つの方法を挙げましょう。

① 湿度・蒸れ対策(菌の暴走を抑える)

蒸れ対策

ストレス汗は蒸れやすい。とくに脇・背中・首は注意。

  • 速乾インナー
  • こまめな拭き取り
  • 通気性の良い服

② 抗酸化ケア(皮脂酸化を抑える)

酸化対策

疲労臭の中心は「酸化」。

  • ビタミンC
  • ポリフェノール
  • 睡眠
  • 適度な運動

③ 休息と睡眠(皮膚ガスに最も効く)

最強の対策

皮膚ガスは代謝 × 自律神経 × 内臓の働きを反映します。

つまり最強の対策は…

  • 休むこと
  • 寝ること
  • 無理をしないこと
匂崎博士
👨‍🔬 匂崎博士
ストレス臭は、休めば自然と薄れていく香りなんだ。
スメル君
🍃 スメル君
博士、ありがとうございました!しっかり休むようにします!

次に読むと理解が深まる記事

匂崎博士
👨‍🔬 匂崎博士
次回は、汗・皮脂・加齢臭の違いについて、ニオイの種類を総まとめする予定です!

📚 参考文献・引用データ

この記事の執筆にあたり、以下の科学的知見を参照しております。

🧪 情動・ストレスと体臭の変化

Smeets, M. A. M., et al. (2020). “Chemical Fingerprints of Emotional Body Odor”.

https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC7142800/

😨 恐怖状態の体臭VOCs

de Groot, J. H. B., et al. (2023). “Unraveling the Universality of Chemical Fear Communication”.

https://academic.oup.com/chemse/article/doi/10.1093/chemse/bjad046/7379646

💨 皮膚ガスと代謝状態

関根嘉香・木村桂大ほか (2017). “What does human skin gas analysis work for?”

https://www.jstage.jst.go.jp/article/jao/48/6/48_410/_article/-char/ja/

🔬 皮膚ガス成分のGC/MS測定

久永真央ほか (2011). “Determination of Volatile Organic Compounds in Human Skin Gas by GC/MS”.

https://cir.nii.ac.jp/crid/1390001204660418688

🌡️ 皮膚表面から揮発する微量成分

関根嘉香 (2016). “Trace biogas emanating from human skin surface”.

https://i.kawasaki-m.ac.jp/jsce/jjce25_2_69.pdf

📊 皮膚ガスの生体情報活用

関根嘉香 (2025). “Utilization of Human Skin Gas as Biological Information”.

https://jcss.jp/journal/pdf/4901/49-1_15.pdf

💪 疲労臭とアンモニア測定デバイス

Ikeda, S., et al. “Development of a wristband-type wearable device for the detection of human skin ammonia gas emission”.

https://cir.nii.ac.jp/crid/1522266331120209280

📰 疲労臭と皮膚ガス(一般向け解説)

Mainichi / 毎日新聞 科学記事 “Body odor is caused by ‘skin gas,’ can be reduced…”

https://mainichi.jp/english/articles/20201003/p2a/00m/0na/014000c